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2022年3月26日土曜日

ブログ引越しのご挨拶

 ブログ K-エンヂニアリングは、クボタエンヂニヤリング(ブログ)に引っ越します。

ブログ | クボタエンヂニヤリング (kubotaenginnering.com)

 K-エンヂニアリング では、某電機メーカーで機構設計を仕事とするブログ主の,趣味の工作を中心に記録してきました。この度、ブログ主は会社を早期退職し、自転車設計、製造をメイン業務とする、クボタエンヂニヤリングを開業しました。

 これに伴いHPを立ち上げ、ブログもそちらに引き継ぐこととしました。よろしければ、新規記事はそちらを見ていただければと思います。元々、広く読んでいただくことを意識した内容ではないのですが、今後も、このこの手の情報を必要とする方にとって意味のある記事を公開していきたいと考えています。

 なお、本ブログ K-エンヂニアリングも当座このまま残すつもりです。過去記事はこちらを都度参照していただければ、と思います。


2021年6月23日水曜日

超硬エンドミルの手研ぎ

 お気に入りのエンドミル。OSG AE-VML6x19。超硬鉄系用4枚刃不等リード。これを使うようになってからぐっと能率も仕上がりもよくなった。

本来、AE-VMS(ショート)のほうが条件が合う場合が多いが、ロングのほうが研ぎ代が多いのでお得感が強い。

上が新品、下が使い倒したもの。研いでは削りで19mmあった刃長が今は4mm程、使い切った感がうれしい。

エンドミル 新品と研いで使い倒したもの比較


知り合いから、手研ぎかい?どうやってるんだ?という質問があったので、手順を書いておく。

粗取りはダイヤモンドディスク。ホームセンターで安く売っているもの。これをグラインダーに取り付け。安物のグラインダーは振れが大きいのでワッシャーを自作して改善

ダイヤモンドディスクをグラインダーに取り付け

逃げ面を研いで、
逃げ面の粗取り


すくい面研いで、
すくい面の粗取り

スコヤで四つの刃の高さを確認、
スコヤで刃の高さを確認

の工程を、刃の高さが納得いくまでぐるぐるまわす。

仕上げは#1000のダイヤモンドやすりで。
仕上げ用ダイヤモンドやすり


仕上がりはこんな感じ。
研ぎ上がり状態
刃の形状やら研ぎ方の蘊蓄やら色々あるが、これが正解、と言えるほど掴んでいない。

この手の作業に老眼の友。
作業用拡大鏡

機械加工しているときはほとんどつけっぱなし。
この手の拡大鏡は色々あるが、レンズが小さめのほうが、周りも見えて便利な気がする。


2021年6月20日日曜日

フライスMX-20アリ溝をキサゲ修正する

 先日、MX-20でS50CをCNCで削っていて、X軸送りSTMがちょっとずつ脱調してずれていくトラブルが起きた。

動作チェックするとX軸送りが時々引っかかる。アリ溝のジブを調整するが、どうもガタつくのに動きが渋い。で、アリ溝の当たりをブリューペーストで見てみた。案の定当たりがかなり悪い。どれ、修正してしまおう。

本来は、アリ溝に合わせたテーパの平面ゲージを作って、それに合わせて可動側と固定側をそれぞれすり合わせるのが筋なんだが、準備が色々必要だし、これだけ状態が悪いなら、現物合わせで可動部の水平面だけ仕上げてもだいぶましになるんじゃないかな、ということで、ともかくやってみる。各軸の直角度やら直線度やらにも影響するので、今回はあまり頑張らず、次の仕上げ代を残して様子をみる方針。

X軸から始めたが、写真は撮り忘れ。

次、Y軸。

固定側平面部にブリューペーストを薄く均一に塗る。

Y軸アリ溝固定側平面にブリューペーストを塗布

ブリューペースト
ブリューペースト

キサゲは割れた超硬メタルソーを鉄フラットバー25X2にロウ付けしてダイヤモンドディスクで刃付けしたもの。
自作キサゲ


刃部拡大
自作キサゲ刃部拡大


可動部側当たり。
Y軸可動部側当り(初期)
写真を撮るのを忘れてたので、これは2~3回合わせたあと。
可動側が中凹になっているようだ。
青が付いたところをキサゲで削る。これを延々繰り返す。

数十回後。
Y軸可動部側当り(終了)

取り合えず、このくらいにしておく。

Z軸。これはかなりひどい。
Z軸可動部側当り(初期)

向かって右側(写真の上側)はほとんど内エッジしか当たっていない。
これは、固定側の内側に段が付いていることが分かったので、当りを見ながら固定側も削った。

修正後。
Z軸可動部側当り(終了)

ついでにコラムとYテーブルの接合部も加工する。
Yテーブル側は一見キサゲ仕上げに見えないこともないが、実際はグラインダー仕上げででこぼこ。ボルトを締めないと、微妙にカタカタする。なんでこんな風になっているのかよく分からない。これだったら機械加工上がりのままのほうがよかったんじゃないのかな。
Yテーブルのコラムとの当たり面(初期)

コラムの接合面。
コラムの接合面(初期)
ひどい凸だけダイヤモンドヤスリで落としておく。
あとはブリューペーストを塗って、よっこらしょ、と抱え上げてYテーブル面に降ろして、数回揺すってまた抱え上げる。

一回目の当たりがこれ。
Yテーブルのコラムとの当たり(初期)

修正後。取り合えずこのくらいにしておく。
Yテーブルのコラムとの当たり(終了)

ここまで来て、Xテーブルとベースの間にも接合面があることを思い出したが、まあ次の機会にやることにする。

組み上げて動作を確認。ジブの調整もきちんと出るし、負荷が随分下がった。場所によって負荷が大きく変わることを心配したが、特に問題なさそう。

負荷が下がって送りモータのトルクに余裕が出たので、Mach3のモータ最高速と加速度を再設定した。

   元                   X         Y         Z

 Velocty        1000    800     600

 Acceleration   100    100      50

  

 修正後            X         Y         Z

 Velocty        1600   1300     800

 Acceleration   200    200      200

軽快に動くし、加速度を上げたのでマニュアル位置決めがやりやすくなった。

失敗した冒頭のS50C部品をテストがてら削ってみる。

これは良い。安定して削れるし、ビビらなくなった。特にバックラッシ補正で一瞬止まるところ。かなり条件を落としても一瞬ギャッ、とびびっていたのが全く無くなった。これでエンドミル寿命も延びそうだし、条件ももっと上げられそう。

ちなみに現状の鉄系の粗取り条件は、刃物がOSGのAE-VML6x19(これお気に入り)で2500rpm、F700、切り込み0.5mm、MQL。切り込みをちょっとづつ増やしてみよう。

あちこち削ったので各軸の直角度をみなきゃいけないけど、それはまた別途。

2021年6月16日水曜日

テーパ抜き用アタッチメント再々製作

 以前作ったフライス主軸テーパ抜きアタッチメントの接着が剥がれた。このバージョンを作った時の投稿が2019.12なので、概ね1年半持ったことになる。首のパイプが薄いから、引っ張りによる変形でちょっとづつ剥がれるんだろうか?

このアタッチメントが無いと、テーパを抜くのにドローボルトの頭をハンマーで叩くことになり、主軸ベアリングの予圧が途端に調子悪くなるので、もう一回作り直すことにした。

完成品はこれ。

テーパ抜きアタッチメント完成品

今回は、主軸穴にタップで左めねじを切って、それに合わせておねじ側のアタッチメントを作ることにした。(ドローボルトの緩め方向で反力を受けるので、左ネジじゃないとアタッチメントが緩んでくる)

主軸の穴径はΦ11.4。ドローボルトはΦ10。M12P1.75の内径はΦ10.1。つまりアタッチメントに普通におねじを切るとパイプ部が肉厚不足で切れちゃう。なので、アタッチメントの主軸と勘合するおねじは、谷径Φ11.3程度でフラット部が広いイレギュラーなねじ山形状が必要となる。

まずは旋盤でブランク作成。

テーパ抜きアタッチメントブランク作成
材質はSUJ2。生材でちょっと強いもの、ということで手持ち材から選んだが、かなり切削性が悪い。この前のようにSCM440調質材のほうが良かったかも。

チャックごと旋盤から外してチャックアダプタでフライスに載せて、コーンで中心出し。
フライスの芯出し

CNCで対辺13mm六角を削る。
六角頭切削


旋盤に戻って、キャップ勘合部のねじ切り。ここはM17P1.5左。
キャップ勘合部M17P1.5左切削

続いて主軸との勘合部のねじを切るわけだが、ここは色々準備がいる。

先ずはねじゲージの作成。
M12P1.75左特殊 ねじゲージ作成

S45CΦ16の端材に主軸穴径に合わせてΦ10.4穴を開けて、タップでM12P1.75左のねじを切った。これに合わせてねじを削る。

次にねじ切り用歯車の準備。
ML-210用オプションのねじ切りアタッチメントは最大ピッチ1.5まで。今回はピッチ1.75左を切りたい。親ねじに勘合する歯車に16Tモジュール1.0を用意すれば、キットの中の28T歯車と組み合わせて28/16=1.75となる。

小原歯車の標準品を入手したので、四つ爪チャックで咥えてボス長さを5mmに詰めて、
ML-210 ピッチ1.75ねじ切り用歯車 ボス加工

フライスに載せて穴を開け、
ML-210 ピッチ1.75ねじ切り用歯車 止めねじ下穴加工

M4タップを切って、
ML-210 ピッチ1.75ねじ切り用歯車 止めねじ加工

バリを落とせば歯車完成。

ねじ山形状が特殊なので、テーパー削りアタッチメントを主軸と平行にセットして、軸方向にずらしながらねじ切り。
M12P1.75左特殊ねじ用旋盤セットアップ

バイトも先がフラットになったものを用意した。(折れた超硬エンドミルをダイヤモンドディスクで成形)
M12P1.75左特殊ねじ切削拡大図
先に作ったねじゲージに合わせて、しっくり入るところまで削る。

後は、主軸固定アタッチメントで主軸を固定して、
MX-20主軸固定


タップで主軸穴にねじ切り。(M12P1.75左)
MX-20主軸上端にねじ切り

ねじ部拡大図
MX-20主軸上端ねじ切り完成図


アタッチメントをねじ込んで、
MX-20主軸上端にテーパ抜きアタッチメントねじ込み

ドローボルトを通して

MX-20テーパ抜きアタッチメント ドローボルト取付状態

前回作ったキャップをねじ込んで完成。

MX-20テーパ抜きアタッチメント完成状態

今度は長持ちして欲しい。

関連記事

テーパー抜き用CAP再製作

フライスXM-20主軸のメンテナンス(その2 テーパー抜き用キャップを作る)

2021年6月12日土曜日

ミニ旋盤ML-210の横送りねじを作る

こんなもん作った。ミニ旋盤ML-210の横送りねじ。
ML-210横送りねじ

上は元ついていたもの、下は新しく作ったもの。
家のミニ旋盤は20年以上使い倒して、この間、とうとう横送りネジがすり減って空回りするようになった。

すり減った部分の拡大。
横送りネジ 既存品の摩耗部拡大


急ぎの仕事は、空回りしない所だけ使ってなんとか仕上げて、一段落したところで重い腰を上げた。
ネジはM8ピッチ1左ねじ、という厄介な仕様で、売ってないので作るしかないな、と。

素材は手持ちのS45C快削材Φ8。
横送りネジ素材

耐久性はどうかな?と思うが、これで減るようならもう一回もうちょっと硬い材料で作ることにする。

外周を削って、
横送りネジ 外周削り


ネジ切って、
横送りネジ ネジ切り


ハンドル部をΦ5に落として、
横送りネジ ハンドル部切削


突っ切って、
横送りネジ 突っ切り


ハンドル部にダイスでネジを切って完成。
横送りネジ ハンドル部にダイスでネジ切り


メネジに合わせずに作ったので、入るかな?と心配だったが、うまいこと行った。
横送りネジ 新規作成品の取り付け状態

ネジガタが0.2mm程度。まあこんなもんでしょ。
自己再生能力があるところは、小さくても工作機械だな。

2020年9月7日月曜日

フライスMX-20のリードスクリュー支持ベアリング交換

 ここ半年ほど、フライスのY軸を+方向に送るとゴロゴロ音と振動が出るのは知っていて、ベアリングにキリコでも入ったんだろうな、と思いつつほったらかしにしていた。先日SCM材を側面円弧切削していて、45°方向近辺にギザギザが出ることに気付き、重い腰を上げてベアリング交換することにした。

削り面拡大はこんな感じ。

ギザギザの出た削り面

円弧の45度近辺、Y軸が+方向に動くところに強く出る。Y軸がマイナス方向では出ない。X方向だけ、Y方向だけ動くところでは出ない。

Y軸駆動部外観がこれ。

Y軸駆動部外観
ベアリング部は一応アルミテープでカバーしている。確かカバーは随分後で追加したはず。

モータとカップリングを外すとこんな状態。ありゃりゃ、これはまずいでしょう。
キリコが付着したリードスクリュー支持ベアリング部

モータ軸周辺にもキリコがくっついてる。
キリコが付着したステッピングモータ軸部

ベアリング回りもキリコだらけ。
キリコが付着したリードスクリュー支持ベアリング部詳細
アンギュラベアリングはシールドが付いていないので、ケアしてやらないと異物は入り放題。

ベアリングを抜いてみると、グリスがやけにメタリックな感じになってる。(写真はY+方向支持用、つまり奥側。Y-方向の手前側は、外側はキリコまみれだが、グリスも回転も特に問題無かった。)
リードスクリュー支持ベアリングのグリスの状態

ベアリングは一応洗って損傷具合をチェックした。
洗いかす。
リードスクリュー支持ベアリングの洗浄かすの金属片

フレーク状の金属片がたくさん。キリコそのままもいくつか。フレークはアルミのキリコがボールでのされたか?

ボール。ちょっと茶色っぽくなっているような気がするが、目に見える傷はない。
リードスクリュー支持ベアリングのボールの状態

外輪、内輪、リテーナー。
リードスクリュー支持ベアリングの外輪、内輪、リテーナの状態

傷は見当たらない。リテーナーは、内側の溝部分に金属フレークがぎっちり入っていた。
ベアリングは見た目きれいなので、洗って組んでもう一度使おうか、とも思ったが、組んでみるとやっぱりごろごろするので、新品交換。

さて、トラブルが出たのにベアリング交換だけでは反省が足りない。
キリコ対策を含め、もっときちんとした構造にしたい。
とはいえ、当座削るものもあるので、今はあまり時間をかけたくない。
で、ごみ除けのワッシャーを挟むことにした。アンギュラベアリングが7001なので外径Φ28、穴径Φ12。ワッシャーを入れるなら、外径Φ27くらいか?

最初、丸棒から削ろうかと思ったが、結構手間がかかるので板から作ることにして、ジャンク箱をあさって、端材のA5052 t1板を見つけだす。

金のこで外周を切ってドリルとカウンターシンクでΦ12穴を開け、(カウンターシンク外径がΦ12だったので。これだと板にきれいに丸穴が開く。)
アンギュラベアリングのシールドワッシャ製作 穴開け

切り離してバリを落とし、
アンギュラベアリングのシールドワッシャ製作 切り離し

2枚重ねてM12ボルトナットで固定してスクロールチャックで咥えて、
アンギュラベアリングのシールドワッシャ製作 旋盤チャッキング

外周を落としてΦ27とする。
アンギュラベアリングのシールドワッシャ製作 外周削り

バリを落として出来上がり、と思ったが、
アンギュラベアリングのシールドワッシャ製作 中間

仮組してみると、外輪とこすれるので、今度は1枚づつ再チャックして外側をΦ24まで0.3mm削る。
アンギュラベアリングのシールドワッシャ製作 旋盤で段差削り

出来上がり。こんなラフな治具もどきでも案外ちゃんと削れる。
アンギュラベアリングのシールドワッシャ製作 完成

薄い丸物は棒から作るより板から作るほうが楽、でした。

部品を洗浄して、ベアリングは新品にグリスを詰めて、
フライス盤Y軸リードスクリュー支持部部品

組立。シールドワッシャは奥にも付いてる。これで少々の異物は防いでくれるはず。
フライス盤Y軸リードスクリュー支持部ベアリングシールドワッシャ組付け状態


組みあがったらバックラッシを確認してMach3のバックラッシ補正値を見直し。

フライス盤Y軸バックラッシ測定

元0.042→0.056と若干増やした。バックラッシは位置によって違うので、補正値は最小値に合わせた。実バックラッシより補正値のほうが大きいと、補正動作時にぴょこんと動くので。
バックラッシの位置による違いは詳しく見ていくとなかなか悩むところで、小さい周期で案外大きく変動する。(最大-最小差が0.04mmくらいか?)おそらくリードスクリューのピッチのよろけか偏心の影響。(偏心が支配的だと思う。)これは別途ちゃんと確認しようと思う。

補正が終わったら、またアルミテープでカバーする。
フライス盤Y軸リードスクリュー駆動部外観(再組立後)

ベアリング交換前の円弧切削面(前出と同じ写真)
ギザギザの出た削り面(対策前)

ベアリング交換後。
ギザギザのない削り面(対策後)

ゴロゴロ音もなくなったし、とりあえずはこれで合格とする。
X軸は異音もないので、今は開けない。